滲出性中耳炎について
ear
滲出性中耳炎の治療方針
滲出性中耳炎は 急性中耳炎後に炎症が治まって中耳の中に液体が残るもしくはもともと耳管という中耳の圧を調節する鼻と耳をつなぐ管が調子が悪い(耳管機能異常、)副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻の奥にある扁桃腺であるアデノイド増殖症など原因が多岐にわたります
急性中耳炎後の滲出性中耳炎では発症1か月で60%治り3か月で75%が治るといわれていますが30%~40%は滲出性中耳炎が再発し5~10%は1年以上罹患しています。
滲出性中耳炎はまずかなりの割合で自然治癒があるので3か月は待つべきで、次の治療はまた続けば考えればよいです
滲出性中耳炎の基本は鼻の治療です。鼻副鼻腔炎を併発している場合はマクロライド療法(CAM長期少量療法)が選択枝となります。アレルギー性鼻炎がある場合は投薬します。
抗菌薬以外ではカルボシステイン(ムコダイン)が推奨されていて 周辺器官への炎症病変への効果が期待されている。
鼓膜切開は小児滲出性中耳炎に対しては切開部が早期に閉鎖するため治療効果は乏しいとガイドラインにも記載されています。そもそも発生機序から考えても耳抜きができないのであるから一時的に切開を行っても、また水が溜まってしまい無効であると思われます。
しかし 診断、治療方針の決定を目的とする鼓膜切開術を1回は行うことはありますし ガイドライン上も認められています。
滲出性中耳炎が長引くと鼓膜が次第に薄くなってくるので(貯留液中の種々の炎症物質が原因)治療目的の複数回の切開は避けています。
そのため鼓膜に持続的に穴を維持するため滲出性中耳炎が3か月以上経過する場合は鼓膜換気チューブが推奨されています。チューブを挿入することによって中耳の気圧はチューブの穴を介して調節可能になります。3か月以上遷延する場合でも難聴の程度が軽症で鼓膜に病的変化がなければ その後も注意深く経過観察することを検討してもよいといわれています。鼓膜換気チューブ挿入術にアデノイド切除術を併用することもあります。
鼓膜換気チューブ挿入術により中耳に空気が入るようになり、中耳炎が長く続いていたため抑制されていた乳突蜂巣の再発育がみられます。ただし4~5歳くらいまでには成人に近いところまで発達しているといわれています
慢性中耳炎(慢性穿孔性中耳炎 癒着性中耳炎 真珠腫性中耳炎)の患者さんは乳突蜂巣の発育が悪く幼少期の中耳が発達しない場合は、成長しても中耳炎が遷延することを示唆しています。ただしやせ型の患者さんでむしろ耳管が開放していて耳の違和感から、鼻をすすって耳管を狭窄させていることもありその場合は乳突蜂巣が発達していても真珠腫性中耳炎を生じていることもあります。
滲出性中耳炎の治療のポイントは
①4歳前後までに急性中耳炎、滲出性中耳炎など中耳炎が治らずに長引いていると乳突蜂巣いわれる耳の周りの骨の発育が悪くなり中耳炎が大人になっても続くことがあるということと 中には難治性中耳炎になり手術治療を要することもあること
②ことばを覚える大切な時期に滲出性中耳炎がなおらずにずっと続いていると きこえが曖昧なために 言語の遅れをきたすこともあります
過去6回鼓膜切開 チューブは未施行 6歳
滲出性中耳炎 炎症が長引くことによって鼓膜が非常に薄くなり(接着;アテレクターシス)
陥凹が著しい
乳突蜂巣(耳の周りの空気の空洞)の発育は不良
5歳児
幼少時より中耳炎を繰り返し あるところから熱もなく 耳漏だけになったので耳鼻科以外で放置してよいと言われたのでそのままにしてあった。会話も聞こえずらい風邪を引いたりすると鼻から耳にいって耳漏が出て、鼓膜穿孔(穴)を介して中耳の外(外耳からも)細菌がはいるようになり1回耳漏がでるたびにすこしずつ難聴が進行していく
慢性穿孔性中耳炎
急性中耳炎→中耳に圧力がかかって→鼓膜に小さい穴が開き耳漏→抗生物質によって鼓膜閉鎖を繰り返している間に穴が閉じなくなって鼓膜に穴が残ったもの鼓膜穿孔縁が端によっている場合は上皮が入り込んで真珠腫性中耳炎を併発していることもあるので注意を要します。